【ノベル】 死と生と鈴の音と セッション7(著:鮎偽 むくち)


ご無沙汰しております。鮎偽です。

ご無沙汰だったのはサイト管理者のユッケさんの体調不良に伴ってになりますが笑

そんなユッケさんも無事に復帰されたとのことで、再び更新をしていただける事になりました。

という事で本年初の更新になりますが「死と生と鈴の音と」をお送りいたします。

前回までに、ヨウくんが死後の世界で3つの選択死を迫られている事から始まった。

そして、そのヨウくんが中学時代に体験したミチちゃんの出会いと、何も始まらないまま終わってしまった夏のこと。

そのヨウくんが大学生となり、不思議なお祭りで出会ったミチちゃんそっくりな(似せている?)チエという女性。

そして、そのミチちゃんと父親が遭遇してしまった夏の夜の出来事。

そして、その父親もまた3つの選択死を迫られていたこと。

これらの思いがどのような物語を紡いで行くのかは、私にもわからない(無責任と思われる所以ですね笑)。

とにかく、期待せずに楽しんでいただければ幸いです。

セッション7をお楽しみください。



「…はぁ、…はぁ」

男は悪夢から目を覚ました。

自分が溺れて死ぬなんて悪夢でしかない。

しかも夜闇の嵐の海でだなんて。

息を整えることさえ煩わしいほど、男はイライラしていた。布団を乱暴に払いのけて、イラつく気分に任せて起き上がる。

計画通りだったなら今頃、自分の車に戻って(正確には誰かの車を拝借してるものだが)、女2人を我が物にしていたはずだ。

それをあんなおっさんが乱入してきたせいで台無しになってしまった。

「くそっ」

立ち上がり、机のところに向かおうとする。しかし、そこにあるべきの机が見当たらない。

「ん?というかここはどこだ?」

そこで男は気づいた。そこは自分の部屋ではない。質素な空間だ。自分の部屋であれば、ベッドから降りたら足の踏み場もない状態だ。しかしここはベッドと簡易的なテーブルのみだ。

「ふざけんな、どこだここ!

チエ! どっかにいんのか!?」

怒りがマックスに到達して、叫んだ。

血の気が多いことは自分でもわかっている。気分屋でいつも何かにイライラして、周りに当たり散らしていた。

そんなやさぐれた心を落ち着かせたいから、薬の売人なんてやり始めた。

売り物に手を出すことはご法度だ。

だから、自分なりにうまいことやりくりしてきた。それが、売り物に手を出すこと以上に危険だと頭の隅でわかっていながら。とにかくそうやって、得た(盗んだ)自分用の薬をしまっている机がないのだ。イライラしないはずがない。

それどころか、自分の部屋でもないのふぁ。

(そうか、さっきの悪夢は夢じゃなくて現実で、いまは病院いはこばれてきたんだな)

「半分正解だ。しかし半分不正解だ。」

ぎくり、今一番聞きたくない声だ。

そう、薬の純度をいじって得た快楽の代償とぉ言うべきものを自分に求めた者の声なのだから。

「お前は、俺の信頼を取り返せなかった。

身内もいない女を用意すると言っていたのに、連れても来なねーでよぉ。

なにをほっつき歩いてたんだ。嵐が来る前に俺に届けるはずだっただろぉが。」

(すまねぇ!じつはもう1人いい女がいたんで、そいつも合わせて連れてこうとしてたんだ)

「ふーん、二尾おって一尾どころか、てめぇのタマまで落とすとはな。」

(はぁっ?)

そこで気づいた。男はいままさに海から上がってきたようにびしょ濡れなのだ。

「はぁ!?なんだこれ」

その声に呼応するように、あの男が現れた。そうだよ。おめぇは死んじまったんだよ。あんなガキの女とオッサン相手によ。

学校で転落して、そのまま起きなければ良かったのかもしれねぇが、不良少女を追いかけていなかで浜辺で捕まえたところでさっさと姿隠せばいいところを、お前は欲が出た。その結果、返り討ちにあって死んじまったんだ」

「そんなわけねーだろ。現にこうやってあんたと話しができてるじゃねーか。病院に運ばれて大丈夫だったんだよ。」

男は例の胸糞悪い含み笑いを浮かべたまま返事をしない。

「それにしてもあのおっさん、ただじゃおかねぇ。チエにしてもそうだぜ。」

「ああ、それも叶わない願いだ」

男が口を開いた。

「頭が悪いお前には状況理解ができないのか。見てくれは強がってる割に、真実を受け入れることができないチキンだったにか。」

両手を広げてやれやれのポーズをしながら男が近づいてきた。

「てめぇ、来るんじゃねぇ。」

「てめぇってのはだれのことだ?よくみてみることだ。君に近づいてくる[私]は一体誰なのか?」

「決まってるだろうが、番場の兄貴だろーが。いくら兄貴でも、や、やってやるぜ」

男は腹を決めた。もうこの場所での商売も何もかも捨てる覚悟を。そして番場の顔を睨みつけた。

(え…..)

目の前まで近づいてきて。吐く息も顔をくすぐる近く。そこにいたのは[私]自身だった。

「そうなのだよ。この結末は君自身の結果だ。そして今君の魂の利用方法が決まった。」

目の前にいる自分はやれやれポーズから一気に腕を広げた。それは言葉の綾ではなく、本当に広がったのだ。まるで網のように両腕が広がり、男を囲み、そして閉じた。

さすがに男もこの時、自分という物語が終わることを察した。網にかかる瞬間に男が思ったのはなぜか「あの女はどうしてあそこまで不良少女を嫌ったのだろうか」という問いだった。

男は、いままでに感じたこともない苦痛と甘美な快感が自分の身体を貫いた。それはすべてのもの。感情も体験も知識も想い出も神経も肉体も一瞬で綯交ぜとなり一つのものとなった感覚だ。

それは、男が自分として感じた最後の感覚であった。

 

男の目の前に迫ってきたもう1人の男は、広げた腕をもとの腕の形に戻した。その両手を合わせて作られたお椀の中には液体とも固体とも言えないものがあった。

そしてそれを持ってどこかへと消えて行った。誰にいうでもなく一言、口から漏らして。

「罪は罰へとなる」

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