【ノベル】 死と生と鈴の音と セッション6(著:鮎偽 むくち)

小説

コンバンワ、鮎偽です。

本日で18年も最後。今年は本業が重なり、遅筆で申し訳ありません。

しかし来年はユッケさんと絵とかでコラボしてやって行きたいと思います。

ユッケさんよろしくです笑

 

前回、チエだけが生き残った嵐の夜が少し見えてきました。そこにミチの父親と思しき人間の姿はありました。

しかし、ミチの姿はなく、何か惨劇があったことも朧げに見えてきました。ミチがどうなったか。そしてヨウとチエが出会ったシーンとどのように物語は繋がっていくのでしょうか?

硬い挨拶はここまで。セッション6をお楽しみください。

「…はぁ、…はぁ」

そこはミチと家族三人でよく遊びに来た遊園地だった。楽しい思い出ばかりだが、一度だけミチが迷子になってしまったことがあった。今、自分が見ているのはまさにその時のシーンだ。

嫁と二人で手分けして探したが見つからず、急いで園内放送をお願いに向かった。そこで男性スタッフにミチの服装や特徴を伝えた。ミチは好きなキャラクターのぬいぐるみをいつも持っていた。そのことも伝えた。すぐに放送が流れ出す。

『ごめんね。。。ごめんね。。。。』

しかし、それは想像していた内容でなかった。

違う!そんなのでは見つかるわけないじゃないか!

気づくとそこは遊園地ではなく学校になっていた。

(そうか。これは夢か。。。)

鈴の音が聞こえた。そして、目の前にテニスラケットと離れた所ボールが転がっているのが見えた。自分の顔のすぐ横にラケットが転がっているということは自分も床に伏している状態のようだ。

そこにスタッフの男性だろうか?娘を連れて来てくれた。

(あんな放送で良く見つかったな)

一瞬思ったがそれはもちろん間違いだった。

その男は倒れこんだミチに殴りかかろうとしていた。

慌てて、自分の横にあったテニスラケットを握り、杖にしながらよろめき立ち上がる。そして男に対して渾身のスイングを繰り出した。

しかし、男の方が一瞬早く反応した。ミチを掴んでいた手を離して、後ろに飛びのける。

この夢の中で右往左往している自分と、それを空から俯瞰しているもう一人のじぶんがいた。俯瞰する視点でやっと分かることがある。

(運というものはやはりあるのだろうな)

スイングをした自分は、一体何がおきたのか、全く把握できなかった。しかし、結果として、男が非常階段から下へ落ちていったことはわかった。

空から俯瞰していたじぶんは、やっと何が起きたのかわかった。そしてあまりにも呆気ないことだった。男が飛び退いた先に黄色い空気の抜けたボールがあったのだ。それも彼の着地点にだ。

「はははは!」

そして、また放送が流れる。

『避難してください。避難してください』

さっきから放送の声は誰か知っている人のものな気がするが思い出せない。

気づくと、今度は祭り会場の中にいた。

(ここは)

思い出すのに多少時間がかかる。それもそのはずだ。ここはミチがまだ幼児の頃に住んでいた都内の地域で実施されていた祭りだ。

ふと気づくと、自分が誰かの手を握っている。柔らかくて小さくて暖かいその手は、忘れることもないミチの手の感触だった。

「なんだ、どこにいたんだ」

安堵した。夢か現実か、意識の混濁していることを自分でも理解できている。

そこに幼馴染の子がやって来た。よく遊んでくれてた子だ。確かミチの小学校時代まで交友があったはずだ。今はどこにいるのだろう。つい最近あったようにも思うが思い出せない。

その子が何か話して来ている。ミチは小学校の低学年までは恥ずかしがり屋だった。幼い頃も、欲しいお面があったら指でさしたり、人形焼の前で立ち止まって服を引っ張ったり、声で話すことよりもジェスチャーで表現することが多かった。

幼馴染の子が叫び出した。でも声が聞こえない。

ミチが後ろを指差す。その顔は無表情だった。

「どうしたんだ?二人とも。」

その時、すごい風と音がした。その時に思い出した。

(そうだ、この祭りは大量の鈴の音が有名だった)

「二人とも、この音は鈴の音だよ。あれだけ大量の鈴があるとすごい力強い音になるもんだよなぁ。」

でも二人はずっと後ろを見て叫ぶか指差すだけだった。

幼馴染の子は大きく口を開けて叫び続けた。口の形は3つだった。

「ん、どうしたんだ?チエちゃん。」

ふと幼馴染の子の名前を思い出した。その瞬間に声が聞こた。

『ごめん!』

その瞬間、体に衝撃を受けた。

視界が暗転した。

あたりは水と静寂に包まれた。

 

目を開けると、そこは質素な病室だった。

自分が全身びしょ濡れの格好だった。そして頭は明瞭だった。

(あれは、走馬灯だ)

「そうだよ。よくわかったね。こんなに早く状況を把握できる人は珍しいんだよ」

そういって入り口にミチが現れた。ミチと瓜二つの姿をした何かといった方が良いだろうか。

(君は誰だ?)

「私が誰かは、正直対した問題じゃないよ」

ミチの姿形をしたモノが言った。

しかし、ミチにはここにいては欲しくないし、そしてミチはここにはいない確信があった。だから一番聞きたい質問をした。

「ミチは生きているんだよな?」

ミチは笑顔で答えた。

「生きているよ。」

涙がこぼれた。そうか、よかった。

「それじゃあ、いいかな。

ではあなたにはこれからの魂の行き先を3つの中から選ぶ権利があります。

そしてあなたには特別優待券が付いてます。

これはあなたが殺された人間だから付いてくるものです。この優待券を使うことであなたは3つの選んだ行き先で通常よりも強力な影響力を持つことができます。」

 

「あなたはどうしたい?」

 

 

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